ひつじの窓

物語とか思ったこととか

居場所 1

猫と私のお話

 

 

AM2:21

私は猫の鳴く声で目を覚ました。

ベッドの上から窓の外に目をやった。

こんな時間に外を歩いている人はいない。

玄関を開けて、猫の声が聞こえたほうを見てみると、黒猫が毛繕いをしていた。

私は黒猫に近づいてみた。

「こんばんは、黒猫さん。」

「あらお嬢さん、こんばんは。」

猫は私に目を向けてにっこりと笑いかけてきた。

このとき私は、なぜこの猫は喋れるのだろうということを疑問にすら思わなかった。

私と黒猫の声以外の音は何も聞こえないほどに夜の住宅地は静まり返っている。

黒猫は私の足元に近づいてきて、私の目を見つめながら話しかけてきた。

「どこかで見たことがあると思ったけど、あなたゆきちゃんね。」

黒猫は私の名前を知っていた。

しかし、私はこの黒猫に見覚えはなかった。

「そうよ、あなたは私のことを知っているの?」

「えぇ、もちろん。でも私はあなたが2歳になる時までしか知らないわ。」

猫は不思議なことを言うものだなと思った。

「私はユメ、たしかあなたのお母さんがつけた名前ね。」

このとき私は初めて、この黒猫が私の家で昔飼っていた猫の1匹だと気づいた。

それにしても彼女はなぜこんなところにいるのだろう。

「ゆきちゃん、お久しぶり。」

「うん。」

「最近元気がないようね。」

ユメは屈んでいる私の膝の上に前足をちょこんと乗せてきた。

「大丈夫、今晩は私がいるわ。ついてきて。」

そう言うとユメは歩き始めた。

パジャマのまま、私は彼女の後を追った。

「ゆきちゃん今何歳なの?」

「今年で24になるよ。」

「もうそんなに大きくなったのね、でも全然変わってないわ。」

そう言うとユメはこちらを振り返り、フフッと笑ってみせた。

たわいもない会話をしながら5分ほど歩いたところでユメは立ち止まった。

そこは私が小さい頃よく遊んでいた通称ハトの公園の入口だった。

「ゆきちゃん、私ここで拾われたのよ。」

そう言うとユメは公園にある1番大きなどんぐりの木を見つめた。

「ゆきちゃんとまたここに来れるなんて本当に嬉しいわ。あのベンチでお話しましょ。」

そう言うと彼女はベンチへと向かった。

後をついていく。

この公園は、なんだか懐かしい匂いがする。

私はあたりを見渡してみた。

水飲み場、ブランコ、滑り台、砂場には忘れ物だろうか、可愛らしいスコップが置いてある。

私がベンチに腰掛けると、ユメは私の膝の上に乗ってきた。

温かい。

私はユメをゆっくりと優しく撫でた。

ふわふわしたその触り心地は紛れもなく、本物の猫の毛だった。