ひつじの窓

物語とか思ったこととか

愛か欲か分からず 候補2

もうすぐ冬が来る。

29度目の誕生日は、記憶に残るかな。

私と百合子は同じ11月生まれ。

ちょうど2週間、私のほうが後に生まれた。

鏡にうつっている自分を見て、また年を重ねるのかと時の流れを恨みながら化粧をして出勤する日々。

そんな日常が、余計に私を老けさせる。

溜まるストレスと脂肪に苦しみながら残業に勤しむが、疲れ果てた頭の中はいつも違うことを考えている。

早く人生終わればいいのに。

私と百合子は同じ大学の薬学部の同級生だった。

日比谷公園のブランコに腰をかけながら懐かしい日々に想いを馳せる。

あの頃はまだ若かったなぁ…

 

先輩のことを本気で好きになったと言っては真剣に将来を考え、そんな矢先に別れることを繰り返し、いつからだろう、彼女は様々な奥の手を使っては非日常の世界に堕ちていくようになっていった。

恋をしていたのはもう何年も前の話。

今は恋という名のお金の間欠泉を探しているだけ。

パパ活は図らずも順調で、彼氏の存在は本当にただの存在でしかない。

何が正解なのか分からないけれど、世間一般的に道徳的価値のあるものでさえ彼女にとっては価値をなさないただの紙切れ。

そんな彼女は今年、29歳の誕生日をパパと迎えたそうだ。

一度でも進むべき間違えると、もう元には戻れないの。

そう私に語りかけてきた彼女の顔を私は見ることが出来なかった。

そっか。

そう呟く私はゲイだと告白してきた元彼を思い出す。

大学3年からの丸4年、ほぼずっと同じ空間にいたような気がする。

心の何処かで依存していた。

大学を卒業してからは殆ど会うことはなくなった。

今頃彼はどこで何をしているのだろうか。

 

今年の誕生日は雨の予報だ。

平日も水曜日、誰とも会う予定はない。

それどころか週末に予定されている資格試験の勉強で遊んでいる暇など微塵もない。

ただでさえ普段から残業で時間が取れないのだから。

昨年の誕生日は、東京タワーの見えるレストランで百合子に祝ってもらった。

彼氏と過ごしたのは一体何年前だろう。

記憶の彼方に消えてしまいそうな、たった3人の元彼たち。

思い出は本当に美しいままなのか。

嫌な記憶のほうが意外と残っている。

ツイッターがきっかけで、長野のスキー場で友達と私と元彼の三角関係を知った日。

神奈川県まで行ったのに徹夜で眠いとぼやく彼にうんざりし、早々にデートを切り上げ険悪なムードのまま帰宅した日。

遠距離の彼の家で浮気を知ってしまった日。

遠方で、全くもって逃げ場がない時に起きた悲劇ばかりが何年も経った今でも頭をよぎる。

何事にも気力がなくなり抗うつ薬を飲み始めた日からずっと、寝る前になると必ず昔のことを思い出す。

最近は月に2回ほど六本木と南青山で開かれている婚活パーティーに参加している。

男を選ぶ基準が、恋愛的なものから金銭的なものへと変化した。

悲しいかな、これがアラサー女の現実だ。

同世代の第2次結婚ラッシュが終わりかけている。

子供を産めなくなる年齢は静かに、でも確実に近づいてきている。

健康な子どもを産むには20代までがいいということを知っている男は一体どれほどいるのだろうか。

医療系学部では当然であっても、世間一般からすると案外知られていないようなリスクたくさんあると最近気づき始めた。

笑顔溢れる素敵な家庭を持つことに憧れていた純粋な乙女心は何処の燃えるゴミに捨ててきてしまったのだろうか。

独身でもいいと思っていたけれど、毎日狭いワンルームで細々と暮らしていると、それだけで気持ちもどんどん沈んでくる。

私もいつかまた誰かを愛せるだろうか。

買ってきたビールを飲まずにベランダの鉢植えの花にかけてみた。

 

明日は私の誕生日だ。

もう一度、夢を見させて欲しい。

 

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