ひつじの窓

物語とか思ったこととか

パイナップル連合会 2

「ねぇりそな、りそなは去年どこに隠れていたの?」

 

薄暗い廊下を歩きながらみずほが聞いてきた。

 

「うーん…私はトイレの個室に隠れてたよ。でもね、去年私と同じ考えだった人が結構いたみたいでさ、今年からトイレに隠れるのは禁止になっちゃったみたい。」

 

「そ、そうなんだ…トイレに隠れるってそれもう出て来なきゃ見つからないの確定だもんね。でも凄い、私にその発想…というか勇気はなかったよ。」

 

みずほは私と違っておしとやかで華奢な女の子だ。

 

トイレに隠れるという発想が彼女の中になかったことに安心した。

 

「みずほは?」

 

「えっ、ぁ、実は私去年は体調崩しちゃって欠席したんだ。だから隠れたのは1年生の時だけで、その時はもみじちゃんと音楽室に隠れてた。すぐ見つかっちゃったんだけどね。」

 

「そっか。じゃあ今年は鬼だけど…鬼として頑張ろうね!」

 

みずほは笑顔でコクリと頷いた。

 

私は今回どうしても見つけたい後輩が3人いた。

 

まず1人目は今年のベネッセ模試で校内順位で4位だったというたかしくんだ。

 

たかしくんの居場所はどう考えても一択。

 

…そう、数学ホールだ。

 

数学ホールの中央には半径πメートルの円があり、周りにはπ/5メートル感覚でガウスの実物大の像が置かれている。

 

数学に関連のある書籍や雑誌、DVDにいたるまで幅広く取り扱われており、数学ファンにはたまらないホールとなっている。

 

私はこのホールに狙いを定めた。

 

「3.1415926535897932384626…」

 

私が円周率を唱え始めると、ホールの隅に置かれているグランドピアノの影からたかしくんが出てきたのだ。

 

「あっ、1人目みーつけた!」

 

みずほが嬉しそうに叫んだ。

 

円周率の誘惑に負けるとは流石たかしくん。

 

観念したのか私たちを見て軽く会釈をしてはにかんだ笑顔を見せたかと思うと、たかしくんはすかさずグランドピアノに座り、「円周率のうた」を弾き始めた。

 

たかしくんがピアノを弾き終わったところで確保し、捕まった生徒の収容所である2階の職員室の隣にある会議室Bに連れて行った。

 

連行している最中もたかしくんはボソボソと数学の定理について呟いていた。