ひつじの窓

物語とか思ったこととか

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理由は明白だった。人を傷つけてしまったこと。そして自分自身もひどく傷つく結果となってしまったことだ。「付き合う」「別れる」ーそんな1つ1つの言葉に重みを感じたのはこの時が初めてだった。私たちの口から発せられるたった一言が、これからの2人の関係を変えてしまう。いや、関係を変えてしまう直接的な原因はこれらの言葉にはないが、この言葉を境に魔法にかかった、あるいは魔法が解けたかのように今までの日常が非日常と化すのだから恐ろしいことである。このとき知った痛みが私の心の奥底に今でも眠っている。もう思い出して胸が痛くなることはあまりないが、先輩とすれ違うたびに気まずさを感じながら研究室生活を過ごすことになったのは言うまでもない。そんな先輩も、もうこの大学にはいないと思うと時の流れを感じずにはいられない。先輩はとあるメーカーの研究職に就いたらしい。もう二度と会うことも連絡を取ることもないが、先輩の活躍を陰ながら応援している。